私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっております議案7件中、議案第1号、及び第4号の2件に反対、残余の議案5件に賛成の立場から討論を行います。

 一般会計決算の歳入は1兆2,894億3,890万円、歳出は1兆2,737億7,120万円でした。歳入から歳出を引いた形式収支は156億6,770万円。翌年度への繰り越し財源38億4,619万円を差し引いた実質収支は118億2,151万円です。財政調整基金は、この一般会計から60億円を積み増し、決算額は319億円の基金残となっています。
 本市の決算は、市税で11億円、地方消費税交付金で10億円、地方交付税で5億円など、歳入が見込みを上回りました。一方、歳出では、市民の外出自粛による福祉サービス利用で55億円、中小企業金融対策資金で28億円、少雪による除雪費で11億円、私立保育所運営費で14億円などが、見込みより減少しました。
 歳入増、歳出減となった一般会計と、財政調整基金を活用し、運営が厳しい介護事業所や民間病院への減収補填や、時短協力を余儀なくされた飲食店等への家賃支援給付など、本市独自の支援策を行うべきでした。

 議案第1号「令和2年度札幌市各会計歳入歳出決算認定の件」に反対する理由の第1は、北海道新幹線の2030年札幌延伸を見据えた、都心アクセス道路建設のための創成川機能強化検討調査費714万円、南2西3地区や北8西1地区など4か所の民間再開発事業への補助金約33億円、北5西1西2地区の再開発を進める、札幌駅交流拠点まちづくり推進費3億3,000万円が含まれているからです。
 総事業費1,200億円規模の都心アクセス道路を中心事業とした調査費は、当初予算500万円が決算では約714万円に膨らむ結果となりました。
 1月26日の札幌市都市計画審議会では、議長を除く委員の3割以上が計画に不同意を表明し、学識経験者の委員は、新型コロナウイルス感染症拡大の本格的な流行前に採用された計画の再検討を求め保留の意思を表明しました。
 整備の必要性に乏しく、市民の理解もない巨額の計画に血税が投入されるなら、くらしや福祉を支える予算を圧迫し、住民の福祉の増進を図るという地方自治体の役割が果たせなくなることから問題です。
 また、不要不急の都心アクセス道路と一体的に整備を進める北5西1西2地区の再開発についても、抜本的な見直しが求められます。

 再開発事業は、「都市周辺にふさわしい土地の高度利用」を目的として都市機能の更新を図ることや、民間投資を活用した再開発等を積極的に展開し、約1,500億円の投資を誘発すると位置付けられ、新幹線駅舎の東改札口整備や横断デッキ構想では、新たな市費負担が浮上しています。これらの事業は公共性を重視した見直しが求められますが、検証がないまますすめられることは、認められません。

 理由の第2は、マイナンバー制度にかかわり、戸籍、住民基本台帳関係や、国保、介護、母子保健などのシステム改修等に3億2,816万円、制度対応事業費10億9,576万円、ICT活用戦略推進費1億1,112万円が含まれるからです。
 マイナンバーカードの利用を国民生活のさまざまな分野に拡大することは、個人情報の集中による国家の国民監視と社会保障費の抑制が狙いです。「効率化」を口実に窓口が廃止、縮小される懸念もあります。個人情報の漏えいと悪用の可能性を否定できず、セキュリティ強化のため際限なく税金を投入することになるため、反対です。

 理由の第3は、丘珠空港関連調整費1億756万円があるからです。コロナ禍で市民説明が不十分のまま、滑走路延長を含む丘珠空港の将来像について議論する、利活用検討など行ったことは、住民と合意した基本的考えを軽視するものであり反対です。

 理由の第4は、「札幌市職員給与条例の一部を改正する条例」等により、本市一般職、任期付一般職、会計年度任用職員の期末手当を0.05か月分カットしたからです。
 新型コロナウイルス感染症対策の最前線で働く市職員の手当て減額は認められません。民間中小企業でも公務員給与を参考にしているところもあり、全ての市内労働者の一時金にマイナスの影響を与えかねないことから反対です。

 理由の第5は、学校規模適正化推進費377万円が含まれるからです。本市の進めた、豊滝小学校や青葉小学校などでの統廃合は、地域合意の図り方と手続きは極めてずさんであり、住民の理解と納得を得られるものではありませんでした。
 2021年4月の「学校施設・地域コミュニティ施設の再構築に係る取組方針」では、学校規模の適正化に加え、まちづくりセンター・地区会館・児童会館などの再構築を一体的に進めるとしています。
 地域の学校を核としたコミュニティのあり方にかかわる重要な方針であり、これまで以上に住民に対する十分な情報提供と時間をかけた対話が不可欠であることは言うまでもありません。
 しかし、この方針では、住民への情報提供や説明の手法は、この間、進めてきた学校統廃合と変わらない考えを示しており、地域合意をいっそう軽視することが懸念されます。
 そもそも本市は、学校統廃合の必要性を、「札幌市小中学校の学校規模の適正化に関する基本方針」の中で、「人間関係の固定化」「クラス替えが困難」「切磋琢磨する機会の減少」などとしていますが、その科学的根拠が不十分なまま、統廃合を機械的・画一的に進めていることは問題であり認められません。

 理由の第6は、国保、介護、後期高齢者医療の各会計や保養センター駒岡などで、利用料や保険料等の値上げにより、市民負担が増えたからです。特に国保は、協会けんぽの2倍と負担は重いものです。均等割の軽減などで、高すぎる国保料を引き下げるべきでした。

 理由の第7は、市営住宅の借り上げ住宅101戸を期間満了に伴い、用途廃止としたためです。このことにより、希望する市民がいっそう入居できないことから反対です。
 理由の第8は、冬季オリンピック・パラリンピック招致費2億2,607万円と基金造成費526万7,200円が含まれているためです。オリンピックは、市民の圧倒的賛成がないもとでは成功できません。2030年札幌招致について、市民の賛否を確認したうえで招致の是非を決めるべきであり、市民の意向調査をしていない段階で、これらを執行したことは容認できません。

 議案第4号「令和2年度札幌市軌道整備事業会計決算認定の件」に反対する理由は、これまで交通局が担ってきた路面電車の運転業務を交通事業振興公社に委託する上下分離を行ったからです。乗車料金設定や乗務員の雇用、安全運行などに直接関わらなくなることで、本市の責任を遠ざけました。
 10月11日に起きた、赤信号見落としによる接触事故は、我が党が課題であると指摘した、技術の継承にも関連した事案であり、本市の責任は免れません。上下分離後も、安全運行のための徹底した指導を行うとともに、検証を十分に生かした事故防止を、交通事業振興公社と一体になって図られるよう強く求めます。

 次に、代表質問ならびに決算特別委員会で取り上げた諸課題について、局別に申し述べます。

 総務局です。
 職員の長時間労働と職員定数についてです。
 2020年度は、延べ904人の職員がひと月100時間を超える時間外勤務であったことが明らかとなりました。医師による面接指導は延べ545人、今年度は9月末時点で370人です。昨年度休職した職員219人のうち、メンタルヘルスが理由の方は7割を占めており、各職場の状況把握と改善が重要です。職場の超過勤務の状況に配慮した、職員配置を行うことが肝要と考えます。
 業務の効率化を目的とした障害認定区分の調査業務の委託は、実践を積み職員相互の研鑽と成長となる業務まで委託するもので、定数配置を増やして対応をすべきです。

 2020年度指定管理者の職員中、非正規職員は正規職員の1.7倍にもなっています。官製ワーキングプアをなくすため、発注者として、本市は賃金水準の変動に応じて指定管理費を変更する賃金水準スライドの仕組みを導入すべきです。また指定管理者制度の検証を行い、非公募の随意契約が多い福祉分野などでの直営化を検討すべきです。

 まちづくり政策局です。
 真駒内駅前地区まちづくり計画についてです。
 本市は今後オープンハウスを開催するとしています。わが党はオープンハウスは、行政からの情報提供でメリットについては強調される傾向がある一方で、住民意見は反映されないと指摘してきました。計画策定後も引き続き市民が話し合える場を設定するよう求めます。

 路面電車活用推進についてです。
 JR札幌・桑園・苗穂駅への延伸に向けて調査を行い、設備投資や、収支採算性などに課題があるとのことでした。しかし、ループ化した市電を3方面へ延伸してこそ、その活用が広がります。今後、新技術の導入も含め、幅広い検討を行うとのことでしたが、来訪者にも分かりやすい「軌道がある」しくみや、JR札幌駅南口広場に電停を設置してJRや地下鉄などから市電に乗り換えられるしくみなど、まちづくりに活用していく必要があります。
 延伸計画を早期に示されるよう求めます。

 市民文化局です。
 本市が行った文化芸術活動実態調査で、コロナ禍の影響により、公演、展覧会、上演会等の文化芸術活動が半減していることが明らかとなりました。今後は文化芸術未来会議において、活動を継続するための新たな支援策を、短期と中長期の2段階で検討すると答弁されました。早急に実施されるよう求めます。

 人権啓発の取組みについてです。
 アイヌ民族や障がいのある方、新型コロナウイルス感染者や、ワクチン未接種者などに対して差別的な言動、中傷が見られ、その根は深く見過ごすことはできません。
 人権問題について理解を深めるため、人権に関する市民の意識調査を行うこと、人権課の設置を求めます。また、デジタル端末による授業にともない、子どもたちの情報モラル教育の授業化を検討すべきです。

 スポーツ局です。
 札幌ドームを高次交流拠点としたのは、日本ハムファイターズの本拠地移転が決まる以前の策定であることから、ここをスポーツ交流拠点とすること自体が問われています。この構想をもとに、新たなスポーツ施設を設置しようとしておりますが、来場者の約4割が利用する地下鉄福住駅から、ドームよりもさらに遠い場所になること、周辺道路である36号線や羊ヶ丘通、札夕線などのいっそうの混雑が想定されること、風致地区、鳥獣保護区、緑保全地域であることからもここに新たな施設をつくることは考え直すべきです。

 札幌市スポーツ施設配置活用実施方針についてです。
 温水プールの利用料金は、民間施設が区民プールより高くなっています。区民プールと同じ料金設定であるべきです。
 また、中島体育センターは指導者養成の役割を担っており、中央区民の利用も多いことから、さらに利用者のニーズに合わせて活用すべきです。

 保健福祉局です。
 介護事業所では、サービスの利用自粛による経営悪化とヘルパーなどの人的体制の不足が深刻です。
 本市は、人材確保促進事業に取り組んでいますが、課題解決にはつながっていません。やむに已まれず人材派遣会社を利用することで、介護事業所の経営をいっそう圧迫しています。人材確保にかかわる負担を調査するとともに、必要な支援を検討するべきです。
 また、介護事業所では、職員と利用者のコミュニケーションは欠かせませんが、「密」を避けながらの意思疎通は課題です。特に、加齢による難聴の高齢者とのコミュニケーションは難しく、介護する人も、される人にとっても大きな負担です。介護者と利用者の負担軽減と豊かなコミュニケーションを保障するため、加齢による難聴者が補聴器を購入する際には本市独自の補助を検討すべきです。

 生活保護についてです。
 特にコロナ禍で困窮する市民にとって、生活保護の申請の躊躇とならないよう、要件について正確な周知が必要です。車や不動産がある場合でも、状況によっては生活保護を利用できるケースもあることなどを、支援を受ける側に立った視点で丁寧に説明されるよう求めます。

 子ども未来局です。
 保育所におけるPCR検査、保育士配置基準について質問しました。
 「陽性者が出た場合は、休園し広く検査を行う」との答弁でしたが、密を避けられない保育現場では、クラスターを起こさせないために陽性者を早く見つけることが重要です。保育所に唾液採取のPCR検査キットを備え、職員や保護者など幅広く無料で検査できる仕組みを求めます。
 人手不足が課題になっている保育現場では、さらに多忙を極めています。国に保育士配置基準の見直しを求めるとともに、本市の「加算保育士等推進補助金」の拡充を求めます。

 子どもの貧困対策についてです。
 「子どもの貧困対策計画」改定のため行っている、子どもの生活実態調査で、子ども用のアンケート項目から2016年の調査にはあった、自己肯定感を問う設問「自尊感情指標」を削除したことは問題です。「貧困との関連性の分析に用いることは困難である」との答弁でしたが、本市は子どもの時期からの貧困に慣れると自己肯定感が持てないということを認識し、「困難を抱える若年女性」などの支援を進めていることからも、重要な調査であり設問として残すべきでした。最善の計画にするため、充分な予算をつけることを求めます。

 経済観光局です。
 本市は「商業者グループ販売促進事業」に取り組みましたが、43事業者グループの申請に対し、採択されたのは予算の範囲内で、13にとどまりました。厳しい経営状況のもと、7割が支援事業から外れたのは問題です。各事業者の自粛にみあった支援とするためには、予算の拡充とともに、職員が直接足を運び事業者の声を聞く取り組みを求めます。

 さっぽろ給付金付き再就職支援事業は、10代から60代まで幅広い層が対象であり、半数以上が就職に結びついています。雇用情勢は依然不透明であり、より良い内容にするため調査や検証もおこない、来年度も事業の継続をすべきです。

 札幌市鳥獣被害防止計画についてです。
 野生鳥獣による農業被害は依然として多く深刻です。被害を防ぐため、実態に見合った対策へ見直すべきです。
 ハンターはエゾシカの処分など苦労があることから実態を把握するとともに、活動しやすい環境づくりを進めていただくよう求めます。

 環境局です。
 気候変動への対策を強化するため、再生可能エネルギーの普及・拡大は急がれる課題です。
 従来からの取り組みである、太陽光パネルなどの再エネ・省エネ機器導入補助をさらに増やすとともに、先進例を積極的に取り入れ、小さなエリアで、再生可能エネルギーによる発電を使えるような仕組みづくりが必要です。
 本市が調査した、宮城県東松島市や釧路市阿寒町の事例から学び、本市の地域特性に応じた再生可能エネルギーを用いた発電設備や電力ネットワーク管理運営をいかに進めるか、専門的な技術や助言を得る方法など、さらに調査を進めるよう求めます。
 また、都市局で、賃貸住宅への高断熱住宅の促進を求めました。省エネ住宅に、再生可能エネルギーによる発電装置を設置し、それらが備わった住宅を送電網でつなぐことで、マイクログリッドも可能となります。経済観光局で、「創」エネルギーや、「畜」エネルギーの開発にとりくむ地元企業への支援を、下水道河川局では、下水熱利用による事業者の省エネ推進の強化を、それぞれ求めました。
 各部局で取り組んでいるCO2削減に資する施策を効果的につなげ、「環境都市・札幌」として早期にゼロカーボンを実現されるよう求めるものです。

 ヒグマ対策についてです。
 6月18日に東区に出没したヒグマの事案について、出没時の本市の対応は、追い払いの判断となりませんでした。様々な専門家の助言を伺い、初動の効果的な対策の検討が重要です。また、必要な対策に資する専任職員数の拡充を求めます。さらに、住宅街にクマを侵入させないため、移動経路を遮断する場所への電気柵設置の継続を求めます。

 建設局です。
 厚別山本公園の整備についてです。
 厚別区山本地域では、半世紀以上にわたり、本市の廃棄物を受け入れ、冬には堆雪場としてもご協力を頂いてきました。新幹線残土の受け入れ候補地に反対する充分な根拠のひとつだと考えます。埋め立て地の都市公園化は、住民が長く望んできた明るい話題です。市民に親しまれる公園となるよう、地域住民の理解と納得のいく手法で整備していただくことを求めます。

 道路整備事業に関するアンケートが、約3,000人の市民に送付されました。回答は世帯主に限られ、税金で担うべき事業を、各世帯からの負担金により実施すると仮定した設問であり、市民の困惑を招きました。行政が行うアンケートとして不適切であり問題です。

 橋梁の長寿命化事業では2024年度までに180橋を補修する予定が、現在65にとどまっています。今年度の事業費は要求額に対し65%の予算額しかなく、インフラ整備としてしっかりと財源措置すべきです。また、橋の耐震化については、管理している橋のうち8割が対象外です。対象を広げ耐震補修の検討に加えることと、国へ補助の要望もおこなうべきです。

 都市局です。
 もみじ台団地の実態と高齢化に伴う課題について取り上げました。我が党は、市営住宅の2割を占める市内最大のもみじ台団地について、早めの建て替え計画が必要であることを早くから指摘してきました。今回の代表質問でも、建設から半世紀を経ても、建て替え計画を持たない市の認識を質したところです。委員会では、もみじ台団地の中でもっとも早く建設されたN団地の高齢化率と空き家率がともに高いことが判明しました。除雪や草刈りなど、高齢化に伴う自治会活動の困難解決は急がれることから、今後は、本市と自治会役員が課題を共有する協議会を早急に開催すべきです。

 教育委員会です。
 本市の給付型奨学金は高校生と大学生対象ですが、大学生の応募が7.6倍と増えているにもかかわらず、採用枠は変わりません。奨学金の採用枠を増やすことを求めます。

 就学援助制度についてです。
 学用品費等の支給時期について、「早期に支給することで世帯変更等によって生じる返金対応などの課題がある」とのことでしたが、学校で補助教材などを購入する時は、年度初めが多く、必要な世帯に必要な時に合わせて支給するべきです。

 以上で私の討論を終わります。