討論に入る前に、新型コロナウイルス感染症によってお亡くなりになられた方々に対し、ご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、治療を受けておられる皆様にお見舞いを申し上げます。そして、最前線で献身的に感染症とたたかっておられる医療従事者の方々を始め、社会生活を支える仕事に従事されている全ての方々に敬意を表します。
私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっております議案22件中、議案第1号、議案第5号から第7号、議案第15号、議案第16号に反対、残余の議案に賛成、日本共産党所属議員提出の「議案第1号『令和3年度一般会計予算』、議案第5号『令和3年度札幌市国民健康保険会計予算』、議案第7号『令和3年度札幌市介護保険会計予算』を撤回の上、再提出を求める動議」に賛成の立場で討論を行います。
2021年度予算は、1兆1,140億円、前年度予算と比較して8.2%の増加となっており、公債会計を除く特別会計と企業会計を合わせた全会計の当初予算計上額は,
1兆7,566 億円と、過去最大の予算規模です。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、地方交付税は約8億円の減額となるため、本市は交付税の代替措置である臨時財政対策債を前年比44.4%増の200億円増額しました。この臨時財政対策債を含む2021年度の市債残高は、過去5年間で最大となる1兆7,342億円、同様に建設債等の残高も、過去5年で最大となる6,009億円となる見込みです。
歳入が減り市債残高が増えることで、財政の硬直化を招く可能性があり、歳出についても聖域を設けず、不要不急の事業をはじめとする予算の削減や削除、見直しを行う必要があると考えます。
議案第1号「令和3年度札幌市一般会計予算」に反対する理由の第1は、大型開発や市民合意のない事業、不要・不急な事業を推進しようとしているからです。
先ほど動議を提案した理由について説明しました、創成川通機能強化検討調査費は、市民合意を得ておらず、都市計画審議会でも委員の意見や疑問について議論が尽くされませんでした。
北海道新幹線推進関係費の札幌への延伸工事は、トンネル掘削工事で出る有害残土の処分地や処分方法も決まらないまま着工され、受け入れ候補地となった周辺の住民から、強い反対の声があがっています。
2030年の新幹線札幌開業にあわせた札幌駅交流拠点まちづくり推進費と民間再開発促進費は、合わせて63億4,500万円にも及ぶ大型の事業ですが、再開発が公共性よりも投資を誘発する位置づけとなっていること、保留床の売買益が見込み通りとなる保障がないコロナ禍の時代に入ったこと、など見直すべきことが多くあります。
丘珠空港関連調整費については、「丘珠空港の将来像」の策定を1年見送ったにもかかわらず、予算計上しており、見直しが必要です。
また、経済観光局の予算となる「富裕層受け入れ環境整備費」のうち、富裕層向けホテル誘致事業については、民間に任せればよく、公費を使う必要性はありません。
冬季オリンピック・パラリンピック招致関連とその基金造成費は、2030年招致ありきで進むのではなく、立ち止まって市民とよく対話し、意見を聞いてから予算化すべきです。
東京2020オリンピック・パラリンピック開催費関連は、中止を要請すべきです。
これらの事業、合わせて約105億5,000万円を削減し、新型コロナウイルス感染拡大により打撃を受けている市民、事業者、医療・介護施設への支援、子育て世帯への支援などに回すべきだと考えます。
理由の第2は、マイナンバー関連費用として、中間サーバー・プラッ卜フォーム、児童手当や母子保健システムなどの改修費等約6,360万円の予算が盛り込まれているからです。
妊婦・乳幼児健診による健康情報や所得の情報等が、マイナンバーに紐づけられる事で、情報漏洩のリスクが高まります。国が目指す、自治体の個人情報保護条例の一元化により、自治体独自の施策が制限される恐れもあります。
議案第5号「令和3年度札幌市国民健康保険会計予算」に反対する理由は、高すぎる国民健康保険料が改善されないからです。
とりわけ、子育て世帯への負担は重く、これについて、先の動議を提出した理由の中でも述べました。来年度からの子どもの均等割りを、本市独自に軽減すべきです。
議案第6号「令和3年度札幌市後期高齢者医療保険会計予算」に反対する理由についてです。
低所得者への保険料軽減の特例措置の段階的「見直し」により、2018年に所得割の、2019年に均等割りの「見直し」が開始され、今年度に特例措置がすべて廃止されたために、低所得者の被保険者保険料負担が増えました。
少ない年金で暮らす高齢者への負担増を認めることはできません。
議案第7号「令和3年度札幌市介護保険会計予算」に反対する理由の第1は、介護保険料の引き下げを行わないからです。動議を提出した理由でも述べた通り、準備基金からの繰り入れをさらに行って引き下げるべきです。
理由の第2は、制度改正により、入所施設での補足給付が「見直し」され、それにより、年金収入120万円を超える非課税世帯の高齢者に、新たに月2万2000円もの負担を強いるからです。
議案第15号「札幌市下水道事業会計予算」に反対する理由についてです。
本市は、創成川水処理センターの拓北水再生プラザ、伏古川水再生プラザの運転業務を民間委託していますが、委託先の管理、監督業務については、本市が行ってきました。このたびの議案は、本市の統括管理をも下水道資源公社に委託する内容です。民間委託を管理する業務まで民間委託するという際限のない委託化は、公的責任をさらに弱め、本市の責任が極めてあいまいになるため反対です。
下水道事業は公共性の高い事業です。民間委託はやめ、市が責任をもって管理、監督すべきです。
議案第16号「札幌市職員定数条例の一部を改正する条例案」についてです。
2021年度の職員定数を、昨年度より213人増やし、医療対策室の体制や、児童相談所の体制の強化など、喫緊の課題に対応して増員を図ろうとしていることは、市民が求める施策だと考えます。
しかし、学校給食業務の委託拡大で5人、水処理施設総括管理業務の委託で4人など、公的責任を後退させて民間委託を促進し、69人の人員削減を行うことは認められず、反対します。
我が党が提出した動議についてです。
新型コロナウイルス感染拡大から1年、命と健康、営業を脅かす感染拡大がいまだに収束しないもと、リバウンドが起こり始め、タイムラグのない第4波の危険性も指摘されています。
2021年度予算は、感染拡大防止策と市民の暮らし、福祉、教育などが最優先でなければなりません。こうした市民の切実な願いに応えるとともに、コロナ危機を体験した市民感覚を反映して、不要不急の大型再開発計画や、市民合意のない事業について見直すことが緊急に求められていることから、予算を組み換え、再提出を求める動議に賛成し、各議員のみなさまに、ご賛同を呼びかけるものです。
次に、代表質問ならびに予算特別委員会で取り上げた諸課題について、局別に申し述べます。
危機管理対策室です。
「日本は、地震の活動期に入っている」と専門家が指摘しており、防災対策の充実が急がれます。防災対策は、市民にとって力を入れてほしい政策の一つであり、市民が災害に備えるための情報の周知が重要です。地震防災マップの見直しで市民へのわかりやすい周知が必要と申しあげます。
また、備蓄物資については「夜用の生理用品と各サイズの子ども用・大人用紙おむつ、アレルギー対応の粉ミルクを配備した」との答弁でした。
避難所は被災者の拠り所であり、被災者の支援拠点となることから今後も、備蓄品の充実を図るよう求めます。
総務局です。
市職員の体制と長時間労働是正についてです。
本市は、9か所あった保健所を97年に1か所に統合し職員も削減してきました。人口当たりの職員数は政令市平均を下回ります。月100時間の「過労死ライン」を超える時間外勤務は今年度12月までで728人と昨年より大幅に増加、特に保健所等での残業時間が突出しています。長時間労働是正への対策を求めます。
職員の行政事務の軽減として、入力等単純作業を民間委託するために行政事務センターを新設するとのことですが、内容には極めて個人的な情報が含まれます。民間委託にすることは問題でありやめるべきです。
まちづくり政策局です。
行政デジタルについてです
「本市は、国の背景を踏まえつつ、デジタル推進担当を開設した」と、答弁がありました。
菅首相の看板政策である「デジタル化」の狙いは、民間の力を大いに取り入れながらデジタル庁の準備を進めるというものであり、内容はマイナンバー制度を実質的に拡大し、国民のあらゆる情報を集積、そのデータを企業の儲けの種にした「成長戦略」そのものです。
経済界は、現在最優先すべきは「生産性の向上」であり、そのためにはデジタル化が必要であるとし、取組の徹底をデジタル担当大臣に要望しています。
市民の利便性より、経済界の求めに答えたものであることは明らかです。
さらに、利活用は拡大される一方、個人情報保護のルール強化は不十分です。
バスターミナルと市電についてです。
本市は「都心アクセス強化で期待される効果として、観光客の移動負担を軽減させる」としています。都心アクセス道路から札幌駅にダイレクトにつなげるバスターミナルを検討していますが、バス事業者がどの程度ルートを変更する見込みなのか、数は示されませんでした。
都心アクセス道路を利用する場合、バス事業者は札樽自動車道の料金が新たにかかることから、利用の見込みが増えるとの予測は立てられず、「期待される効果」の根拠は不明確です。バスターミナルの右折進入について「安全性が課題」だと答弁されました。マイカーの都心部への乗り入れ抑制も同時に考えるべきです。
そのためには、公共交通で都心部に入りやすくするため、市電延伸の具体化が急がれます。「市民からの署名を重く受け止め1日も早く目に見えるようにしたい」との答弁通り、具体的な3路線の延伸計画を示すよう求めます。
財政局です。
自粛等で経済的に厳しい状況が続き、減収も多く、閉店も目にします。コロナ特例の納税猶予制度は市民、事業者から「ほっとした」という声が聞かれていますが期限は1年です。さらに通常の猶予制度利用や延長ができるとのことですが、事業者と相談し柔軟な対応を求めます。また事業者への固定資産税等のコロナ特例減免制度は1年限りなので翌年度も継続すること、個人固定資産税については制度がないので、コロナ特例での減免を国に要望するよう求めます。
市民文化局です。
札幌市消費者センターには、年1万件ほどの相談が寄せられます。最近は、送り付け商法や悪質な定期購入によるトラブルが増え高齢者が巻き込まれる被害も増加し、弁護士会から禁止や防止の意見書が上がっています。特定商取引と預託商法については厳しい法制化が見込まれますが、その中に含まれる「契約の電子化」は更に被害を拡大する恐れがあり、電子化しないよう国に要望すべきです。
平和都市宣言啓発事業です。
本市は、核兵器禁止平和都市宣言から来年3月で満30周年となります。今年は、核兵器禁止条約が発効され世論、関心も高まっております。被爆者の語り部事業、平和訪問団など各種平和事業は本市も大変有意義と認めており、予算を増やして、取り組みを広げていくべきです。
次に保健福祉局です。
「生活保護」についてです。
生活保護を申請する際に親族等への扶養照会が行われることが申請をためらう原因の一つになっています。「配慮する」とのことですが、やめるべきです。また、ためらわずに申請できるよう、ポスター掲示など周知を求めたところ、検討すると答弁があり、早急な対応を求めます。
「無料低額診療事業」についてです。
コロナ禍の影響で生活に困窮する市民が増えている中、必要な医療を無料または低額な料金で受けられるこの事業の役割は、ますます高まっています。
しかし、この事業や実施施設の周知が不十分であることから、厚生労働省は、各自治体に対し、実施施設の一覧をホームページに掲載する等、周知を図るよう通知しています。また副市長も「ホームページの掲載を検討し周知を図っていきたい」旨の答弁でした。積極的な市民周知を図るべきです。
「乳がん検診」についてです。
30代日本女性のがん罹患率の1位は、乳がんです。本市は、乳がん検診の受診年齢を40歳からとしていますが、30歳に引き下げる事で、早いうちから乳がんへの意識を持つことができ、早期発見・早期治療に繋がります。京都市、大阪市などで実施しているように、本市でも30歳からの乳がん検診を実施する事を求めます。
子ども未来局です。
子どもの貧困についてです。
全国の子どもの貧困率は13.5%と、子どもの7人に1人は貧困状態にあることを示しており、「子どもが生まれ育つ環境には様々な困難が生じている」と認識を述べられました。また、貧困が見えにくいことについて、「深刻さが見えにくい傾向にある」と答弁されました。周囲が子どもの貧困に気づいた時には、すでに深刻化していることが多く、素早い対応が必要です。給食費の無償化や就学援助の拡充など、該当する世帯に直接届く現金給付・現物給付を幅広く行うための積極的な財政投入を求めます。
本市では、例えば子どもの医療費助成制度の対象学年が拡大されていますが、そのことにより、どの程度の世帯に貧困対策が及んでいるか、いないかを、庁内各部局と連携して常に検証する必要があります。次期の計画策定時には、貧困率が算出できる調査を行い、実態をつかむこと、子どもの貧困をいつまでに、どこまで減らしていくのかを明記した実効ある計画とするよう求めます。
保育環境についてです。
保育現場は3密を避けられない仕事で、市内の多くの保育施設は、子ども同士1メートル以上の間隔をとることが難しい実態にあります。感染しないだけの距離がとれる保育施設基準や、一人ひとりの子どもに対応できるだけの保育士配置基準の改善を国に対し要望するよう求めました。
本市の待機児童数は、2020年4月で1,869人、10月は2,401人でした。
2021年4月入園にむけた1次申し込みで入れなかった子どもの割合は28.5%と、政令市中最も高く深刻です。
待機が多い1歳や、0歳児が就学前まで通園できる整備の支援、保育士が長く働き続けられるよう、処遇の改善と育児休業等が取得しやすい環境整備を本市独自施策で上乗せすべきです。
環境局です。
再生可能エネルギーについてです。
本市が「気候変動対策計画案」に示した、「2050年実質ゼロ」にするための再生可能エネルギーの導入が急がれます。
「CO2排出の少ない電力を選択するために情報発信を強めたい」と答弁されましたが、もっと積極的な本市の姿勢が必要です。経済観光局とも連携し、地域ごとに住民が主体となり、地元企業が発電設備を生産・設置するような地産・地消の再生可能エネルギー導入へと、踏み出すべきです。また、再生可能エネルギー推進計画を策定し、本当に2050年にゼロにする決意を市民に示すことを求めます。
水道局です。
水道料金の負担軽減についてです。
新型コロナウイルス感染症の長期間に及ぶ影響で、多くの家庭や自営業者などは収入が減少する一方、外出の自粛によって電気・ガス・水道などの公共料金の負担は重くなるという二重のダメージを受けています。この深刻な事態に厚生労働省は、地方自治体に対して「水道料金の支払い猶予等の柔軟な措置を実施するよう」に2度にわたり通知し、減免を実施する自治体が全国的に広がりました。しかし本市では実施していません。全市民と事業者に行き渡る支援として、水道料金の減免に踏み切るべきと申し上げます。
消防局です。
救急搬送を担う救急隊員は、常に感染の危険に晒されています。万が一、隊員が感染した場合、救急体制への影響は大きくなるため、救急隊員を広い意味で医療従事者として捉え、予防的なPCR検査を実施すべきです。
最後に教育委員会です。
就学援助制度です。学用品費の1回目の支給を現在の9月から、新学期の4月に前倒し支給することを質しました。「様々な状況を勘案し、適切な支給時期について検討をしているところ」との答弁でしたが、本市の2021年度就学援助の制度改正とシステム改修に合わせ、新学期の支給とするよう求めます。
また、スキーなどの体育実技用具は、現物支給から現金支給にし、家庭ごとの選択肢を保障することを求めました。
包括的性教育について取り上げました。幼児期からの性的虐待の被害をなくし、望まない妊娠を避けるためにも、生涯を通じて、自らの性行動を自己決定できるように、学校教育を推進することが重要です。
教員がLGBTの子どもたちへの配慮を隅々まで行うことや、性的な不快感は、ハッキリ拒否するよう教えることが大切です。児童生徒に対するわいせつ行為による懲戒処分も起きており、子どもたちへの調査を検討するよう求めます。
以上で私の討論を終わります。