私は日本共産党所属議員を代表して、ただいま議題となっております意見書案第9号「組織犯罪処罰法改正法案の撤回を求める意見書案」に賛成する立場で討論を行います。この意見書案は、民進党市民連合および改革、無所属、市民ネットワーク北海道との共同提出によるものです。
国会はいま、政府与党による強行採決を許すのかどうか、国民の不安と反対世論の高まりのなかで緊迫した事態となっています。私は、民主主義を押しつぶし、物言えぬ監視社会に道を開くこの悪法を阻止するために、全力をつくすことを改めて表明するものです。
国会審議を通じて、この法案の問題点、危険性が次々と明らかになっています。
第1に、この法案は、具体的な犯罪行為があってはじめて処罰するという近代刑事法の大原則をくつがえし、国民の内心を処罰の対象にする違憲立法だということです。
5月18日、国連人権理事会が任命した国連プライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏から、本法案がプライバシー権や表現の自由を過度に制限すると強く懸念する書簡が安倍首相に届けられました。
ところが、菅官房長官は、その指摘は「全くあたらない」と一顧だにせず切り捨てました。国連から重大な懸念が指摘されているのに、応えようともせずに一蹴する、その傲慢な姿勢に、憲法が保障する思想・良心の自由、表現の自由を軽んじる安倍政権の実態が示されています。
第2に、政府のいう「テロ対策のため」「一般人は対象にならない」などという説明は、今やぼろぼろだということです。
政府は、国際組織犯罪防止条約を批准するために共謀罪法案が必要だといいます。しかし、この条約がつくられる際、テロリズムを対象にすべきでないと主張していたのは日本政府自身であり、極めて矛盾した態度というほかありません。
また、日本は既に、テロ防止のための13本の国際条約を締結し、66の重大犯罪について、未遂より前の段階で処罰できる国内法を整備しており、日本弁護士連合会が指摘するとおり、同条約の締結に共謀罪の新設は不要なのです。
政府は、「組織的犯罪集団」や「実行準備行為」を要件としているから内心を処罰するものではないと主張していますが、その論拠も崩れています。
「実行準備行為」について、金田法務大臣は、花見か下見かの区別は、ビールか双眼鏡かなど外形上で判断できると答弁していました。
ところが、野党が議論を詰めていくと、今度は外見ではなく「計画にもとづくかどうかで判断する」と言い出しました。計画とは、すなわち頭の中の考え、内心にかかわることは明らかであり、これを認めた法務大臣の答弁は極めて重大であるといわざるを得ません。
さらに、金田法務大臣は、「組織的犯罪集団」とは、テロリズム集団、麻薬密売組織、暴力団には「限定されない」と明言しました。これは、一般人も処罰の対象になることを認めたものであり、「内心を処罰するものではない」「一般人は対象にならない」という政府の説明は、ことごとく崩れているのです。
第3に、この法案は、物言えぬ監視社会をつくり出す現代版治安維持法であり、民主主義を押しつぶす弾圧法だということです。
岐阜県大垣署による市民監視事件が大問題になっています。風力発電の建設に反対する住民を監視し、その個人情報を企業側に流して住民運動をつぶす相談までしていたもので、警察は、裁判でみずからの違法性が認定されても謝罪も反省もせず、適正な職務執行だったと開き直っています。
いま、警察によるこうした監視活動は全国で問題となっており、ここに共謀罪が新設されれば、警察による一般市民の監視、電話やメールの傍受、盗撮などが大手を振ってまかり通っていくことは火を見るよりも明らかです。
組織犯罪処罰法改正法案いわゆる共謀罪法案は、市民の自由な言論・表現を萎縮させ、物言えぬ監視社会を作り出す現代版治安維持法にほかならず、このような法案を断じて許すわけにはいきません。
すでに、この間、特定秘密保護法、安保法制いわゆる戦争法、そして盗聴法が強行され、さらに安倍首相は、期限を切った憲法の明文改悪まで打ち出しました。これら一連の流れは、情報を統制し、政府に批判的な世論を抑え込むとともに、憲法9条を投げ捨て、文字通り日本を「戦争できる国」にしていこうとするものであり、到底、看過できるものではありません。
改めて申し上げます。今、私たち本市議会に問われているのは、憲法が保障する思想・信条・表現の自由などの基本的人権を守り未来へとつなげていくのか、それとも物言えぬ監視社会に道を開くのか、まさにそのことが鋭く問われています。
どの世論調査でも、8割近い国民が「政府の説明は不十分」と答え、約6割が「今国会での成立に反対」し、北海道新聞の世論調査では、反対が59%で賛成34%を大きく上回っています。
国民の世論も明確です。本意見書案を全会派一致で採択させ、議員、議会の良識をはっきりと示そうではありませんか。そのことを議場の皆様に心から訴えまして、以上で私の討論を終わります。