20160302 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっております議案について、第37号、第38号、第39号、第51号、第57号の5件に反対、残余の議案15件に賛成の立場から討論を行います。
 今回の補正予算は、歳入歳出それぞれ57億9406万9000円の追加となります。その財源は、国庫支出金などの特定財源38億円余、増収が見込まれる市税と繰越金で19億円余となっていますが、その際、議案57号「基金条例の一部を改正する条例案」に関連し、オリンピック・パラリンピック基金造成のために30億円の一般会計からの歳出の予算を組んでいることは問題です。
 オリンピックは、いかなる差別もなく、友情、連帯、フェアプレーの精神で相互に理解しあい、スポーツを通して、平和でよりよい世界をつくることに貢献するものです。同時に、札幌招致にあたっては、何よりも「市民が主人公」の姿勢を貫き、基金設置も含め市民との十分な合意を築きながら進めることが重要と考えます。また施設建設にあたっては過度な投資とならないようにすること、開催後の施設の後利用について十分な活用を図る見通しをもつこと、を基本とすべきです。
 現在、オリンピック・パラリンピックの開催のための事業総額は示されておらず、2014年10月に本市が実施した市民意見募集では、賛成が約6割、反対約4割で、同時期に行った「1万人アンケート」では、「開催費用や維持費などの財政面」への強い関心が示されています。また、北海道新聞社が昨年11月に行った調査では、賛成55%と前回調査より13ポイント減り、反対は44%と14ポイント増えています。大多数の市民が賛成しているとは言い難い中で、30億円の基金造成を図ることは時期尚早と考えます。
 条例案には「冬季オリンピック・パラリンピックの招致および開催のための事業」に資する、と記されています。市民合意を得て招致活動を進めることと、招致活動を進めたのちの開催の可否とは別の段階のことであり、不確定な要素が多いなかで「開催」も含んだ条例となっていることは看過できません。
 日本経済の長期にわたる景気の底冷えで、市民のくらしはいっそう厳しく、年金や介護、子育てなど福祉の充実は切実です。国が社会保障削減を進めるなかで、「せめて札幌市政で福祉施策の充実を図ってほしい」との願いが広がり、国保料の引き下げや、子ども医療費の通院無料化の年齢枠拡大の陳情が議会に提出されています。子ども医療費の通院無料を1学年拡大するのに必要な費用は約4億円、国保料の1世帯1万円の引き下げは、30億円と試算されており、オリンピック基金造成の30億円が市民の願いと合致しているのか疑問と言わざるを得ません。
 よって、市民合意が十分とは言えないいま、基金造成を図る議案第57号には反対です。
 議案第51号「一般会計補正予算」(第5号)には、オリンピック基金造成のほか、マイナンバーに関する予算が組まれています。
 マイナンバー関連システムを運用する地方公共団体情報システム機構J-LIS(ジェイリス)は、1月13日、18日、19日にシステム障害を起こし、一部の自治体で個人番号カード発行などの業務が滞りました。その後21日、22日、25日にもシステム障害があり、個人番号カードのICチップの不具合、中継サーバーの動作不安定などが原因とされています。また、香川県で二人の男性に同じ番号が割り振られていたことが2月24日に報道されています。
 今回の補正では、債務負担行為でもマイナンバーに関する補正を行おうとしています。本市に保管されている社会保障と税、災害に関する個人情報を、2017年7月から、国や他の自治体などから照会を受けた際に情報提供するためのシステム改修とそれに伴うテスト費用7億円で、当初予算と合わせると10億円となります。
 市民の個人情報の流出を防ぐ方法などなく、保守管理や維持に今後も莫大な費用をかけ続けるマイナンバー制度は「百害あって一利なし」です。
 よって、議案第51号ならびに関連する議案第38号「個人番号利用条例の一部を改正する条例案」に反対です。
 議案第37号「農業委員会の選挙による委員の定数に関する条例の全部を改正する条例案」に反対する理由についてです。
 農業委員会は、農地を自主的に管理するために農業に従事する人たちが代表者を選ぶ自治のしくみでした。今回の制度改定は、農業委員を首長が任命することとなり、農業従事者の自主性が損なわれます。
 農業者の代表である農業委員は、農業者や地域の声を結集し、農地の権利移動についての許認可や農地転用の業務を中心とした農地行政の執行をはじめ、農地に関する資金や税制、農業年金などにかかわる業務も行います。これらの業務は、それぞれの地域の土地利用のあり方を踏まえた優良農地の確保とその有効利用を進めるうえで、特に重要になっています。
 農業委員会は、自らの代表者を選ぶことで農家から信頼され、農地の守り手として役割を発揮します。地域内の農業に関するすべての事項について意見を公表することや、行政庁に申し述べることができる「意見の公表、建議」という文言を削除し、農業委員会の公選制を廃止して市町村長の任命制に変えることは、行政委員会としての独立性を奪い、「農地の番人」としての農業委員会制度を形骸化するものであり、反対です。
 議案第39号「市税条例の一部を改正する条例案」は、国の地域再生法に基づく固定資産税の軽減措置によるもので、東京23区の企業が、地方に本社機能を移転または拡充するにあたり、都道府県知事の認定を得た場合、税の優遇措置等を受けることができるという3年間の時限措置となっています。
 政府の総合戦略は、本社機能の移転等と一体に、政府の方針として地域限定正社員の普及拡大を目標にしています。
 本社機能の移転と称していますが、その内容は、調査・企画部門、情報処理部門、研究開発部門、国際事業部門、管理業務部門などの事務所や研究所、研修所など、本社機能の一部を移転する場合でも固定資産税を減免するものであり、さらなる大企業支援策の一環です。
 大企業の内部留保は3年間で38兆円も増え、300兆円を突破し、2年連続で史上最高の利益を上げています。支援を行うのなら、大企業ではなく体力の弱い地方の中小企業と、そこに働く人への地域循環型経済の構築と安定した正規雇用の拡大にこそ力を入れるべきです。
 今回の市税条例の一部改正は、さらなる大企業支援策と地方創生を、労働条件の格差拡大、雇用の流動化に利用するものであり、反対です。

 以上で私の討論を終ります。