20160301 私は日本共産党を代表して、24日に留保した市長の政治姿勢6項目について質問いたします。

 質問の第1は、安全保障関連法、いわゆる戦争法についてです。
 秋元市長は昨年の第4回定例会、我が党の代表質問に対し、「争いのない平和な世界を実現していくことが何よりも大切であり、この法律が想定する事態が起こることのないよう、政府にはあらゆる努力を尽くしていただきたい」と答弁しました。
 戦争法に改定されたPKO法には、安全確保業務、駆けつけ警護が新たに加わり、自衛隊による海外での武力行使が可能になりました。2013年以来、激しい内戦状態にある南スーダンでは、現在353人の自衛隊員が派遣されていますが、政府軍と反政府軍、双方によって数千人が殺害され、240万人が家を追われ、虐殺、レイプ、拷問などの残虐行為が繰り返されるなど、住民を巻き込んだ激しい武力衝突が起こっています。
 これまではPKOにおける自衛隊の武器使用は、自己保存のために限定されていました。活動内容も停戦状態の維持、監視、施設や道路を作ることなどに限られていました。ですから深刻な内戦下での派遣でしたが、これまでのところ幸いにも自衛隊は一発の銃弾も撃たず、1人の戦死者も出さないできました。しかし、改定されたPKO法では、特定区域の保安のためとして、自衛隊が監視、駐留、巡回、検問及び警護をおこない、妨害する勢力が現れた場合排除、粉砕するための武器使用を認めています。
 現在、自衛隊が展開する南スーダンでは、国連の施設が襲撃を受け、銃撃戦が繰り返されており、PKO部隊自身が交戦当事者となっているのです。しかも武装勢力は住民を含む様々な集団が入り混じり、拉致された多数の子ども達にまで銃を持たせ、少年兵として戦うことを強制しており、軍隊と民間人との区別もつかない状況です。自衛隊員が少年兵や民間人を殺し、逆に殺されるという可能性があります。まさに市長が危惧する事態が起こると思いますがいかがか、お答えください。
 またこのような武器の使用が海外での武力行使を禁止した憲法9条に反すると考えますが、市長の認識を伺います。
 アメリカによる無法なイラク戦争に対して、日本の国際法学者の8割が違法と断じています。しかし日本政府はイラク戦争を支持し、安倍首相も正当化されると明言する姿勢で、アメリカから過激組織ISに対する空爆への支援要請があった場合に、拒否できると思えません。空爆に参加したフランスでは、昨年だけで6件もテロ事件が起きています。日本が空爆などの戦闘行為に加わることで、本市もテロの脅威にさらされる懸念はないとお考えなのか、市長の認識を伺います。
 安倍政権は戦争法の制定で、立憲主義を否定し、更に明文改憲の暴走を加速させようとしています。自民党改憲草案は、戦争放棄を謳った憲法9条を骨抜きにし、自衛隊を国防軍にするとしています。中でも緊急事態条項は、戦争や大規模災害を口実に、国会での審議抜きに法律と同一の効力を持つ政令を制定できるというもので、戦前の戒厳令を想起させるものです。基本的人権を制限し、独裁政治につながるこのような条項について、市民の人権と生活を守る立場にある市長として、どのようにお考えか伺います。

 質問の第2は、アベノミクスについてです。
 内閣府が発表した2015年10月から12月の国内総生産の速報値では、前期比0.4%減。これが1年間続いた場合、年率換算で1.4%減となることが明らかになりました。
 GDPの低迷の最大の要因は、大企業が2年連続で史上最高の利益を上げ、内部留保は3年間で38兆円も増え、300兆円を突破している一方で、個人消費の源となる労働者の賃金が上がっていないためです。厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査では、実質賃金は前年比0.9%減と4年連続マイナスです。しかも安倍政権の3年間で正規雇用が23万人も減る一方で、非正規雇用の労働者が172万人も増えています。本市の労働者も41.7%が非正規雇用であり、特に若者と女性の非正規率が顕著です。
 経済成長で最も大切なのは、国内総生産、GDPの約6割を占める個人消費ですが、最新の家計調査でも、2人以上世帯の昨年12月の消費支出は1年前に比べて名目で4.2%、実質で4.4%も減っています。消費税の引き上げもあり、実質賃金が減り続ける中で、大企業が儲かれば家計も潤うという、トリクルダウンの筋書きは既に崩壊しています。こんな時に、更に消費税を10%に引き上げたら、市民の暮らしにも経済にも大打撃になることは明らかであり、消費税増税はおこなうべきではありません。
 アベノミクスは本市の経済にどのような影響を与えているのか、また市長はどのように評価しているのか、伺います。

 質問の第3はTPPについてです。
 環太平洋連携協定、いわゆるTPP協定については、2月4日ニュージーランドで参加国による署名がおこなわれました。協定に含まれるISDS条項は、国と民間企業との間の紛争を解決するための手続きを定めるものです。これまでに自由貿易協定を結んだ国同士において、ISDS条項に基づく訴訟件数は450を超えています。例えばカナダでは政府が禁止している添加物が入った商品のため、健康被害が懸念されるという理由で、アメリカからの輸入を禁止したところ、アメリカの企業に30件以上訴えられ、賠償金は150億円以上にもなっています。
 このようにISDS条項によって莫大な賠償請求や、国内で定めた規制が撤廃される事態が起きているのです。日本には遺伝子組み換え食品の表示義務がありますが、アメリカにはないために日本のルールである表示義務を課すことは輸入を阻害する行為だ、とアメリカの農業食品業界が訴訟を起こす可能性があります。各地で広がっている地元産の食材を使った学校給食についても、多国籍企業から自由競争の妨げになるという理由で訴えられる可能性があります。韓国では、アメリカと自由貿易協定FTAを結んだ際に、アメリカ企業の参入を規制するような法律や規則など、60本以上を改正・廃止しています。また韓国政府は自治体に対して地産地消を盛り込んだ条例を撤廃するよう指示したということが、現実に起こっています。
 本市が進めている学校給食の地産地消の自粛や、縮小につながる恐れがあります。日本の農業だけでなく、子ども達に安全で安心して食べられる地元の食材を提供したいという考え方や、食の文化がISDS条項によって壊される大問題です。
 前回の代表質問で市長は、「道産品の海外への販路拡大など、TPPをチャンスとして捉えることができる」と答弁していますが、TPP協定のISDS条項により、本市が外国企業から訴訟を起こされたり、賠償請求される可能性が出てきます。先進国の中で最も食料自給率の低い日本が、アメリカなどに食料主権を脅かされるだけではなく、食の安全や安心が奪われることは明らかだと考えますがいかがか、伺います。

 質問の第4は、泊原発についてです。
 原発事故は、他の事故とは違う異質の危険があります。ひとたび重大事故が発生し、放射性物質が外部に放出されれば、もはやそれを抑える手段はなく、被害は空間的にどこまでも広がり、将来にわたって甚大な被害を及ぼし続けます。福島原発事故から5年が経過していますが、いまだに10万人もの方々が先行きの見えない避難生活を送っています。
 使用済み燃料の最終処理費用、事故時の莫大な保障、原発の建設コストの上昇などの理由から、世界は原発ゼロ社会に向かっています。最大の原発大国であるアメリカさえ、原発稼働数を減らし、福島原発事故をきっかけに、ドイツ、イタリア、スイスが原発ゼロ社会に向かっている時に、安倍政権は九州電力川内原発1・2号機に続き、関西電力高浜原発3号機・4号機の再稼働を強行しました。自然災害や有事の際の対処方法、避難計画は審査対象となっていないなど、多くの疑念が払拭されない新規制基準のもとで、これではまさに安全神話の再来です。
 北海道電力は泊原発を再稼働させようとしています。市民の暮らしと安全を守ることが自治体の役割だと思いますが、市長として泊原発の再稼働に反対する立場を明確に市民の前に明らかにしてください。

 質問の第5は、新年度予算案についてです。
 1点目は、予算の考え方についてです。
 秋元市政における本格予算となる新年度予算編成は、額にして約9,366億円と、当初予算としては過去最高となり、全会計の合計は1兆6,011億円にものぼります。市長は「誰もが安心して暮らし、生涯現役として輝き続ける街」「世界都市としての魅力と活力を創造し続ける街」の2つを、まちづくり戦略ビジョンアクションプラン2015に基づき、未来への投資となる事業として、積極的に計上したとしています。
 しかし、昨年の選挙後の肉付け補正予算同様、都市基盤の強靭化を進める再開発事業で、国が推進する大規模開発を優先するものです。建設事業費は1,292億円が計上され、対前年比279億円増と膨らみ、都心再開発事業に124億円が投入されることになります。秋元市政に対して市民が望んでいるのは、暮らしや雇用が守られ景気の回復が実感できることです。まずは市民所得が上がることが、市内経済の回復のために必要だと思いますが、市長のお考えを伺います。
 2点目は、地域経済の活性化についてです。
 本市は、企業誘致を更に拡充させ、国などの優遇税制を活用し推進するとしています。新年度予算では、企業立地促進事業で7億9,300万円がコールセンター・本社機能22企業に、IT・コンテンツ・バイオの分野に20企業などに補助を出すことになっています。国内外の活力を取り込む街で産業振興をするとしていますが、地元の中小零細企業に対する直接的な支援こそが、域内経済を活性化させ、本市の経済基盤を強化するものと考えますがいかがか、伺います。
 3点目は、公共事業のあり方についてです。
 新年度予算案では、都心部での再開発事業への本市補助金額は約124億円にもなります。市債のうち、土木債で63億5,600万円が都市再開発事業費に計上されています。都心部の大型開発を誘導するのではなく、公共施設、学校の改築や福祉施設、医療機関などの耐震診断、耐震補強への補助など、福祉型の公共事業を優先すべきと考えますがいかがか、伺います。
 4点目は新年度予算への公約の反映についてです。
 選挙公約から見ると、子どもの医療費無償化の拡充、第2子の保育料無料化、給付型奨学金の創設などは後景に追いやられ、市民の願いに応えるものになっていないと考えます。これらは最も優先されるべき市民の要望であり、新年度に予算化すべきと思いますがいかがか、伺います。

 最後は、MICEについてです。
 さっぽろ未来創生プランでは、人口減少問題に向かって安定した雇用を生み出す。結婚、出産、子育てを支える環境づくりなどを目標に、子育て支援や雇用対策に取り組もうをしていますが、向かう先は観光、MICE事業が大きな柱となっております。海外からの観光客と大型の会議の誘致で経済を活性化させ、雇用を生み出そうというものです。
 しかし、MICE事業は全国各都市でおこなわれており、激しい都市間競争を勝ち抜いていくには、誘致への助成金の更なる引き上げや、施設整備のために税金が投入され続けることになります。本市は2018年のニトリ文化ホールの閉館に伴い、新しいMICE施設建設に向かっていますが、まずは既存の施設利用を最優先し、身の丈にあった事業計画にしていくべきと考えますがいかがか、伺います。
 以上で私の質問の全てを終わります。ご清聴ありがとうございました。

秋元市長 答弁

 私の政治姿勢について6項目のご質問をいただきました。
 まず、安全保障関連法についてお答えをいたします。
 PKOの活動などに対し、様々な懸念や疑義についてご指摘があったところでありますけれども、争いのない平和な世界を実現していくことが何よりも大切であるという思いは、昨年の第4回定例市議会でもご答弁申し上げたとおりであります。
 この法律が想定する事態が起こることのないよう、政府にはあらゆる努力を尽くしていただくとともに、国民の懸念や疑義に対しては丁寧に説明していただきたいと考えております。
 また、いわゆる緊急事態条項に関しましては、憲法で規定する必要性、あるいはその内容などについて、慎重かつ充分な国民的議論が必要であると認識をしているところであります。
 次に、アベノミクスについてであります。
 金融緩和や財政政策に加え、規制緩和を中心とした成長戦略などによって、全国的な経済情勢は一部に弱い動きが見られるものの、これまでのところ緩やかな回復基調が続いてきているものとの認識にあります。
 札幌市におきましても、アベノミクスにより進んだ円安の影響などもあり、来札外国人宿泊者数が過去最高を更新するなど、一定の経済効果があったものと認識をしているところであります。
 次に、TPPについてでありますが、輸入食品につきましては、国の検疫所や全国の自治体等において、各食品の輸入動向や生産・製造における事情等も踏まえて検査や監視指導をおこなっているところであります。
 国におきましては、食品添加物の基準、遺伝子組み換え食品等の安全性審査や表示を含め、TPP協定によって日本の食の安全・安心に関する制度変更はおこなわれないとしております。
 札幌市といたしましては、今後も引き続き食の安全・安心が確保されるよう、最大限努めてまいります。
 次に、泊原発についてであります。
 泊発電所の再稼働につきましては、現在も原子力規制委員会の審査が継続中であり、現時点でその是非について言及できる状況にはありませんが、国や事業者に対しましては、市民・道民に丁寧な説明をおこなうよう求めてまいります。
 新年度、次に、新年度予算案についてお答えをいたします。
 予算の考え方と地域経済の活性化、そして公共事業のあり方と新年度予算案への公約の反映についてでありますが、平成28年度予算は、人を大事にするということを原点に据え、市民が安心して暮らしていくには、雇用の場や所得の確保、中小企業等の支援・育成が重要であるという観点から、地域経済の活性化に意を用いたところであります。
 具体的には、国の地方創生加速化交付金を活用した様々な雇用施策や、小規模企業向けの融資枠の拡充の他、食関連企業を始めとした市内中小企業の取り組み支援や、地元企業を中心にすそ野の広い観光産業の振興などに取り組むこととしております。
 公共事業につきましては、道路整備などの社会基盤整備や区役所の建て替えを進める他、学校施設の整備についても拡充を図ったところであります。更に、定員拡大に向けた保育所整備や、特別養護老人ホームの整備の前倒しの他、引き続き福祉施設や医療施設など民間建築物の耐震化を促進をしていく考えであります。
 公約に掲げた事業につきましては、アクションプランに盛り込み、計画的に実施をすることとしておりまして、今後の予算編成においても、着実に進めてまいりたいと考えております。
 最後にMICEについてであります。
 MICEの推進は、高い経済効果や、まちのブランド力向上につながりますことから、札幌市のまちづくりにおける重要な施策の1つと認識をしているところであります。
 大規模MICEの開催には、会議ホールや展示場、宿泊施設等が同一エリアに集約されていること、あるいはアクセスの利便性等が求められており、こうした条件を満たす都心部でのMICE機能の更なる向上が必要と認識をしているところであります。
 こうしたことを踏まえまして、MICE主催者や経済界からの要望なども考慮いたし、来年度具体的な計画の策定に着手をしてまいりたいと考えております。
 私からは以上であります。

伊藤 りち子議員 再質問

 はい。2点について再質問させていただきますが、その前に指摘をさせていただきます。
 アベノミクスで外国人宿泊者数が過去最高を更新したと、一定の経済効果があったというお話でしたけれども、これも平和で安全であってこそ、こうした外国の方々が安心して日本に観光に来られるということがあります。この平和の問題についても、経済にとっても重大な問題であるということを、指摘しておきたいという風に思います。
 質問ですけれども、憲法について、私は市長に対して9条に対する市長の認識についてお伺いしたのです。政府があらゆる努力をして国民の懸念や疑義に丁寧に説明していく。こういう他人事ではなくて、札幌市民の命を守るべき市長として、この問題についてどのように受け止めているのか。また立憲主義についても、今脅かされ壊されようとしている時に、この憲法9条の理念についてどういう風に認識されているのかということを、お伺いしたいと思います。
 それから、原発の問題です。現時点で自らの立場について言及できる状況にないというご答弁でしたけれども、今、代表質問の中でもお話したとおり、この原発の問題は、あらゆる災害や事故、こうしたものとは異質の危険があるということを指摘しました。
 現に5年前に起こっている福島原発事故は、いまだに事故は収束しておりません。更に原因も究明されていない。こうした中で、安全神話の反省も忘れて安倍政権は原発の再稼働を進めようとしており、まさに泊原発は今年度再稼働がされるかもしれない。こういう危険な状況の中で、市長が他人事のように様子を見ているということではなくて、きちんと危険な原発、安全神話の反省も踏まえて、泊原発は再稼働するべきではないということを市民の代表者としてきちんと声をあげていくべきだと考えますかいかがか、伺います。

秋元市長 答弁

 憲法9条の問題についての認識はどうかということでございました。
 先ほども申し上げましたとおり、憲法9条で規定をする平和への考え方。このことについては、様々なこの法案についての議論の中でも平和を守るということ、あるいは世界の平和に対して日本はどのように貢献するかと、していくかという考え方については、同じ思いだという風に思っております。
 そういう意味で、先ほどご答弁をさせていただいたとおりでございます。
 それから泊原発の問題。そして今様々な国の審査がおこなわれて、安全基準に対してどうかという審議がおこなわれている。そういった過程の中で、安全性の確保、あるいは再稼働の是非についての判断を言及する状況にはないという風に申し上げているところです。
 これはあくまでも、これまでも申し上げておりましたとおり、安全性が確保され、そのことに対する道民・市民の理解が得られるということが重要だと認識をしております。
 以上です。

伊藤 りち子議員

 はい。9条については同じ思いだということですが、その同じ思いの市長の思いがなかなか伝わってこないなというのが、今、私の率直な感想です。
 そして泊原発については、やはり前上田市長は危険なこの原発が、原因も究明されていない。そして本当に危険だという点では、再稼働するというテーブルにつくべきではないと、ここまで明確に札幌市民の安全、命を守る立場に立った答弁をされております。新しい秋元市長が、こうした判断する、言及する時ではないという風にいうことでは、市民は納得できないという風に思います。
 今沖縄でも本当に基地を建設するかどうかという中で、いろいろな考え方の違いがあっても、沖縄県の知事や市長が体を張って沖縄県民の命を守るために、力を尽くしている。こういう大変な時に、平和や泊原発の問題について安全が脅かされてしまう。その時に、市民を代表する首長としてしっかりと明確にこの問題についても言及していくべきだということを、強く求めまして私の質問を終わらせていただきます。