2012110503 私は、日本共産党を代表して、陳情第45号から第47号につきまして、採択すべき、すなわち市営住宅の家賃減免制度の改悪、値上げはやめるべきとの立場で討論します。
 家賃減免制度の改悪に反対する理由の第1は、公営住宅法の規定に関する問題です。
 公営住宅法第1条には、このように書かれています。「この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする」
 憲法第25条の具体化、国民の生存権の保障として位置づけられたのが公営住宅であります。
 民間賃貸住宅と同じように見えても、法的位置づけが違います。
 理事者は、「市営住宅に入居できない市民との公平性の確保」などとされていますが、市民の声を聞く課でも、オンブズマンも、「不公平であり、公平性が確保されていない」という苦情・意見は1件もないと報告しています。
 「利用している人と、していない人の公平性の確保」とは、値上げをしようとするときに、市が決まって持ち出す「受益者負担論」です。判断の基準のない「公平性」なるものを設定し、「値上げをすれば公平性が確保される」と言って値上げを合理化するようなことは、もうやめるべきです。
 市営住宅の場合は、公営住宅法で、「低額所得者に低廉な家賃で賃貸する」ことが決められています。
 委員会で、理事者は、市営住宅の家賃は、近くの似たような住宅、すなわち近傍同種の民間賃貸住宅の家賃以下にしないと「違法である」ことをお認めになりました。
 最初から、「入居できない市民」すなわち、近傍同種家賃との比較をしようとすることが間違いであります。
 理由の第2は、弱い者いじめの値上げだからです。
 市営住宅は、低所得者のためにつくられているので、高額所得の入居者はいませんが、その中でも家賃減免制度の利用者は、つましく暮らしています。
 この家賃減免は、生活保護基準をもとにして作られているため、制度利用者の所得は、保護基準とほぼ同等か、それ以下です。最低生活費を下回っていても、生活保護を受けていない人が、この制度に助けられて、暮らしているのです。
 今回の値上げは、市営住宅入居者全員にかかわるものではありません。減免制度を利用していない人は、値上げにはなりません。所得の少ない人にだけ、値上げするものです。しかも、本市の制度は1割減免から8割減免までありますが、今回の改悪は、制度利用者の中でももっとも所得の少ない人たち、8割減免と7割減免を廃止し、最大でも6割減免にしようとするものです。減免制度利用者の70%が、8割減免となっているため、ここで値上げすることで財政効果を上げようとしているのであります。低所得者を狙い撃ちする悪質な値上げであり、到底容認できません。
 第3は、値上げの理由に合理性がないことです。
 その1点目は、修繕費との関係です。
 理事者は、家賃減免制度について諮問した住まいの協議会で「今後ますます維持修繕費や建て替え費用が増大することが見込まれてございます。これらに必要な財源を確保するため」と言って、見直し、値上げの必要性を訴えています。
 家賃を上げると、修繕費を増額できるかのように聞こえます。
 畳表の交換やふすまの張替えなど、計画修繕が遅れており、計画修繕を進めてもらいたいという要望は、非常に強くなっています。「修繕してもらえるなら、値上げもやむを得ない」と考える入居者もいると思われます。
 しかし、家賃収入と修繕費との間に因果関係はありません。前年度と比較して、家賃収入が増えても、修繕費は減額になったり、あるいはその逆だったりしています。
 修繕費の財源は、家賃収入ではなく一般財源が充てられているからです。必要な事業費は、一般会計の中から予算付けされることになっています。
 家賃を上げれば、修繕費が増額されるかのような誤解を与える説明を、住まいの協議会に行ったことは問題です。
 その2点目は、医療費控除の関係です。
 市営住宅には、高齢者が多いため、病院通いしている方も多く、年金など自分の収入から病院代を引いて、所得を算出して、減免家賃の計算をしている方も多いはずです。
 ところが、住まいの協議会の答申では、「医療費控除について、現行制度では還付額が適正に申告されているか、捕捉及び確認が困難な場合があるなど、公平性の観点から控除額の認定に疑問があるため、控除のあり方を含め見直す必要がある」ということです
 委員会で、この答申をどう解釈しているのか質問したところ、理事者の答弁は「高額療養費の支給を受けた場合や、生命保険の給付金を受けた場合に、それらが正しく申告されない」問題だとされました。
 たしかに、高額療養費の支給を受けたことが申告されないと、実際よりも高額な医療費がかかったことになり、所得が少なく計算されることになり、本来の家賃よりも安くなることになります。
 しかし、委員会で、「そういう実例はあるのか」と質問したところ、「ない」とのことでした。
 「ない」のでしたら、「控除額の認定に疑問がある」などと不正が行われていることを前提にすべきではありません。
 さらに、改悪制度では、入院医療費の控除を認める一方、外来医療費の控除を認めないとしています。
 高額療養費の対象の大半が入院医療費だと考えられます。
 本当に、高額療養費を問題にしているのであれば、入院医療費を控除から外し、外来医療費のみ控除を認めるはずですが、市がやろうとしていることは逆です。
 本市は、最初から、実例もない高額療養費にかかわる不正を問題しているのではなく、適当な財政効果と利用者の負担増の落としどころの瀬踏みをして、入院のみ控除を認めるようにしたとしか思えません。
 理由の第4は、市民と制度利用者が強く反対してことです。
 値上げ反対の議会陳情は、191件に上っています。そのうち、市営住宅自治会が提出したものが31件になっており、このようなことは本市議会始まって以来のことです。
 行財政改革推進プランのパブリックコメントでは、家賃値上げについて、賛成1、反対9と圧倒的な反対でした。
 入居者アンケートでも、制度利用者の回答は、やむを得ない17.9%、反対51.1%と過半数を占めています。
 市民と、制度を利用している当事者の声を尊重すべきであります。
 「市民自治」を本当に実現するためには、弱い立場に置かれている人たちを守ることが必要ではないでしょうか。
 低所得者に対して、最低生活費を割り込むような値上げを強いることはやめべきであることを申し上げ、討論といたします。