私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっております議案7件中、議案第1号「令和5年度各会計歳入歳出決算認定の件」、並びに議案第7号「令和5年度下水道事業会計剰余金処分及び決算認定の件」に反対、残余の議案には賛成の立場から討論を行います。
 一般会計決算の歳入は1兆2,103億1,669万円、歳出は1兆2,010億9,532万円でした。歳入から歳出を差し引いた形式収支は92億2,138万円、翌年度への繰越財源31億1,900万円を差し引いた決算剰余金は61億200万円です。
 このうち、31億円については、財政調整基金に積み立て、残余の30億円を翌年度に繰り越しました。財政調整基金は2023年度の活用を93億円と見込みましたが、25億円の支消にとどまったため基金残は320億円となり、本市が一般財源として活用できる財政調整基金は、維持するとしている100億円の3倍を超えています。
 幅広い市民の生活支援と社会保障や子育て支援に資する施策に積極的に使うべきでした。
 議案第1号に反対する理由の第1は、都心まちづくり推進費として、大通・創世交流拠点まちづくり推進費・約18億円、札幌駅交流拠点まちづくり推進費・約76億6,000万円が含まれている他、北海道新幹線推進関係費・約36億9,000万円、民間再開発促進費・約20億6,000万円、創成川通機能強化検討調査費・約26万円や直轄事業負担金の中に都心アクセス道路関連費として約4億3700万円が含まれているからです。
 本市は、北海道新幹線の札幌延伸やオリンピック招致を起爆剤として、まちのリニューアルをすすめてきましたが、昨年の時点でオリ・パラ招致活動は「断念」、北海道新幹線札幌延伸工事の遅れは明白でした。
 本来、新幹線延伸工事から出る有害残土処理に、地域住民の合意がないもとで、5年前倒しの2030年開業ありきで、事業を進めるべきではありませんでした。さらに、開業時期の遅れや資材及び燃料価格、人件費の高騰といった社会経済情勢の変化に対応して、札幌延伸による需要予測や経済効果、建設負担金の見通しなどの再検討が必要でした。
 都心アクセス道路についても、創成川通の混雑度は最低ランクであり市民の合意もなく緊急性もないことから、用地買収や測量のための支出には同意できません。
 札幌駅周辺や中心部の民間再開発については、既に事業者レベルで規模縮小の検討がおこなわれています。今後、資材などの高騰により総事業費が膨張し、市の補助金も増大する懸念を指摘しておきます。なお、都心のタワーマンションでは、転売目的で購入され、定住人口の増加に結び付いているのか疑問の声も寄せられていることから検証が必要と考えます。
 反対の第2の理由は、冬季オリンピック・パラリンピック招致費として4556万円が含まれているからです。
 昨年の市長選で札幌五輪招致反対を掲げた2名の候補者の得票率は4割を超え、2023年度のオリ・パラ招致費の執行にあたっては、こうした民意の反映が問われました。
 しかし、市長は、骨格予算で計上した6900万円に、選挙後4100万円を追加補正し、市民の賛否の意思を確認しないまま、さらなる招致に突き進みました。こうした市の姿勢が市民の不信感を招き、住民投票条例の制定を求める「直接請求署名」運動に発展し、招致活動の「断念」に追い込まれたのです。市民の理解が得られなかった要因を、東京五輪大会後に発覚した不祥事に転嫁するのではなく、市民と正面から向き合った検証が必要であったと申し上げます。
 理由の第3は、マイナンバー関連として、制度対応費やマイナポイント事業費、マイナンバーカードセンター運営費あわせて10億6,069万円が含まれているからです。
 国は、マイナンバーカード取得が任意であるにもかかわらず、現行の健康保健証廃止を強行し、カードに保険証や運転免許証などを一体化しようとしています。
 市民のプライバシーを守るべき本市として、個人情報集積による漏洩のリスクが高まるマイナンバーカードの普及推進はやめるべきです。
 理由の第4は、学校新増改築費の中に、学校規模適正化、いわゆる学校統廃合を検討する学校配置検討委員会設置に関する費用として、649万円が含まれているからです。
 決算特別委員会の質疑で「検討委員会は統廃合を前提として進めているものではなく、検討委員会ではその旨確認したうえで協議している」との答弁でした。
 しかし、検討委員会が配布するニュースレターを見た住民からは、毎回「統廃合しないで小規模校を残してほしい」「統廃合ありきではないか」などの意見が寄せられていることから、地域住民や保護者には、検討委員会が統廃合ありきでないことの周知が徹底されていないと考えられます。
 あらためて周知し、意見を聞く場を設けるなど、地域の納得が得られないまま進まないよう求めておきます。
 理由の第5は、札幌市職員定数条例の一部を改正する条例により、民間委託拡大で茨戸水再生プラザ23人、学校給食調理業務8人を削減したことから反対です。
 理由の第6は、国保、介護、後期高齢者医療の各会計において、いずれも高過ぎる保険料負担軽減をしないだけでなく、後期高齢者医療は、負担が増えたため、反対です。
 議案第7号は、都心アクセス道路整備に伴う下水道管移設工事費用が含まれているからです。
 通常管路は可能な限り延命化を図っておりますが、都心アクセス道路整備を開始する前に下水道管移設工事を終了させる必要があるため、管路改築計画にはない工事を行うことになりました。本来優先すべき管路の改築が遅れることが危惧されることから反対です。

 次に代表質問並びに、決算特別委員会で取り上げた諸課題について、局別に申し述べます。
 はじめに危機管理局です。
 重要土地等調査法は、自衛隊駐屯地や原子力発電所などの周辺地域において、対象施設の機能を阻害する行為を調査するため、土地・建物を規制する法律であり、本市では2024年1月に施行、丘珠・真駒内駐屯地他6施設が指定されました。
 阻害行為を行う可能性やおそれがあると、国が判断した場合、土地等の利用者の調査を行い、自治体にも情報照会が求められる可能性があります。「必要最小限の事項について回答する」との答弁でしたが、安易に住民情報を提供すべきではありません。法について市民に周知することを求めます。

 総務局です。
 会計年度任用職員制度の3年公募についてです。
 総務省は、会計年度任用職員制度の3年公募の廃止を自治体に示しました。本市の今後の対応についてお聞きしたところ「制度運用の実態と他都市の状況をふまえつつ、適正な制度となるよう努める」との答弁でした。会計年度任用職員の雇用の安定につながるよう、早急に廃止に向け検討すべきと申し上げます。

 デジタル戦略推進局です
 自衛隊募集事務に係る対象者情報の提供について、本市は2022年から自衛隊の求めに応じ、18歳および22歳の住民の情報を提供しています。
 自衛隊法97条第1項、自衛隊法施行令第120条などを根拠にしていますが、防衛省は「強制するものではない」「義務ではない」としています。市区町村が提供する仕組みは存在しないため、2021年、防衛省と総務省は、名簿提供について「住民基本台帳法上、特段の問題を生じない」との連名通知で、名簿の提供を依頼したものにすぎません。
 自衛隊の名簿提供は中止するよう求めます。

 まちづくり政策局です。
 公共交通事業者に対する財政支援の見直し効果について質問しました。
 「バス事業者において適正な利益が計上されるよう本市が経営基盤を下支えする必要性の認識」を示された一方、「予定される運賃値上げによって事業者の収益性が一定改善される」との期待を答弁しました。値上げは交通機関を利用する市民に負担を強いるものであり、さらなる乗車率の減少、路線減便に繋がります。
 代表質問では「誰もがどこでも行けるよう、安全で手頃な公共交通機関を目指すSDGsの目標」の考え方について、「路線バスの利用者減少や運転手不足という環境の中でも、将来にわたって公共交通機関による移動手段を確保していく観点で、方向性は一致している」との答弁でした。
 公共交通事業者への支援は、SDGsの目標に資するものにすべきです。
 丘珠空港周辺のまちづくりについてです。
 2024年7月、本市と11連合町内会で構成する「丘珠空港周辺地域連絡協議会」がまとめた「札幌丘珠空港と周辺地域の共生に関する基本構想(素案)」では、「航空機騒音の環境基準を超える運用が避けられない場合、防音対策補償の検討が必要」と、騒音被害の発生を許容する姿勢を示しており、容認できません。また、滑走路を延長する「丘珠空港の将来像」と、丘珠駐屯地を含む自衛隊施設への武力攻撃を想定した「自衛隊基地の強靭化計画」は、同時期に進む計画となっていますが、共用空港であるにも関わらず本市は、防衛省・国土交通省との協議を行っていないことがわかりました。協議を実施するよう求めます。

 財政局です。
 第4回定例会に本市が提案予定している市民サービスや市有施設利用などの受益者負担見直しについては、2019年から2025年の物価上昇比率、人事院勧告の伸び率を見て行うとのことでした。自治体の手数料や使用料の設定は、低廉な価格であることを土台として考えるべきです。
 市有施設の物価高騰分や人件費の高騰分を市民に負担させるべきではないと申し上げます。

 市民文化局です。
 平和都市宣言普及啓発事業についてです。
 ノーベル委員会は10月11日、ノーベル平和賞を「日本原水爆被害者団体協議会」に授与すると発表しました。
 被団協の活動が「核兵器が二度と使われてはならない」「核兵器は悪の存在である」という核のタブー確立に大きく貢献したことが、80年近く核兵器を使わせていない、と評価されています。
 その中で「戦争のない平和な世界を築くことは、人類共通の願いです」と、はじまる札幌市平和都市宣言の理解の広がりは、今こそ重要です。
 平和への思いを次世代に引き継いでいくための人材育成や、ノーモア・ヒバクシャ会館の機能を今後も存続させていくことが大切だと申し上げます。

 スポーツ局です。
 代表質問では、単年度の純損失・約6億5千万円、実質運営赤字が4億5千万円となった株式会社札幌ドームの決算にふれ、「スポーツ交流拠点基本構想」は考えなおすべきと求めました。市の答弁は、ドーム周辺にアリーナや賑わい施設等を効率的・効果的に運用配置して相乗効果を発揮できるというものでした。
 札幌ドーム運営では、日本ハムファイターズ移転後の減収収益を補うだけの利用増加が見込めるのか、交流拠点では、ショッピング等のにぎわい施設や遊びの体験型施設を併設するエスコンフィールドと競合する可能性はないのか等、リスクの説明はありませんでした。改めてドームを核とする基本構想は見直すべきと申し上げます。

 保健福祉局です。
 敬老パスについてです。
 本市が新たに提案した変更案は、現在の敬老優待乗車証いわゆる敬老パスの上限額を3万円引き下げ、対象年齢の5歳引き上げ、自己負担額を利用額の50%まで引き上げるもので、敬老パス事業を大幅に縮小するものです。
 本市は敬老パス事業が、若い世代の負担となるとの市民の声を説明されていますが、市に寄せられたアンケートや、コールセンター、メールで寄せられた意見を独自に分析すると、若い世代への負担となる、また、高齢者が優遇されているという意見は0.7%とわずかでした。世代間の負担の格差を取り上げるのであれば、自ら実施した意見集約の結果を市は分析し、結果を公開すべきと申し上げます。
 我が党の代表質問にたいして市は、敬老パスと新たな「健康アプリ」を分けて整理し、両制度を選択可能にしたと答弁されていますが、市民からは、利用しづらくして、5年後の見直しに合わせて廃止するのではないかという不安の声が寄せられています。
 市長は昨日、敬老パスの見直しに係わり、11月30日に市長と語る企画を実施し、オープンハウスを2日間、開催すると発表しました。昨年「素案」の段階で市が実施した市内10行政区での意見交換会やイベント開催と比較しても、わずかなものであり、これで新たな変更案を市民に周知できるとは思えません。
 パブリックコメントを実施する前には、市民説明会や意見交換会の場を各区で実施することや、アンケートにより市民の意思を確認するよう求めます。
 コロナ後遺症についてです。
 新型コロナウイルス感染症は、感染拡大とともにコロナ後遺症になる方も増加します。
 重症化する場合、仕事を休まざるを得ないなど、経済的な影響も出ることから、保健所が相談窓口であることを、わかりやすく周知することと併せ、周囲の支援が得られるよう理解促進へ取組むことを求めます。
 難聴の早期発見と補聴器利用促進の支援についてです。
 70歳前後の約7割に軽度難聴以上の症状がみられ、放置することによる脳の認知機能低下につながります。後期高齢者健診や特定健診の項目に聴力検査を加え、早期発見や対応に繋げるよう求めます。
 また補聴器購入助成については、今年度240を超える自治体で実施をしており、本市独自に実施を検討するよう求めます。
 就労継続支援A型作業所の廃止についてです。
 今年4月、国による障がい福祉サービスの報酬引き下げの影響から、本市においては、4月から9月にA型事業所の14ヶ所が廃止され、214名が退職や解雇されました。今後も事業所の経営悪化が起こることも考えられます。事業所や利用者の相談にきめ細やかに対応していただくよう求めます。
 保健事業プラン2024についてです。
 とくとく健診の受診促進は、経済的な理由により受診意欲が低くならぬよう自己負担無料化の拡大を検討頂くよう求めます。
 未治療者へは、人が関わる丁寧な受診勧奨で治療につなげることと合わせ、健診事業で生活の質向上をめざしていただくよう求めます。

 子ども未来局です。
 「子ども誰でも通園制度」は、生後6ヶ月から2歳の未就園児を対象に、10時間の枠内で定期利用、または不定期に利用する自由利用ができる制度です。本市の試行的事業では、施行実施要綱にある、親子面談や親子通園を自治体として推奨し、子どもや保育現場の安心と負担軽減に取組んでいます。
 本格実施では、このような自治体の裁量が無くなるのではないかと現場から不安の声が上がっています。保育の実施義務は市町村にありますので子育て世帯や保育事業者の意見を聞きながら、保育の充実を図るよう申し上げます。
 医療的ケア児保育のモデル事業についてです。
 本市は、喀痰吸引や導尿などのケアが日常的に必要な、医療的ケア児の保育モデル事業を開始し、現在7施設で各1人ずつ受入れをしています。入所を希望している保護者は、産休・育休期間に、安心・安全な環境で医療的ケアが受けられる保育環境が整うことを待ち望んでいます。思い切った人材の配置と、予算の増額で受入れ施設の拡大を求めます。

 次に、経済観光局です。
 農業振興施策についてです。
 次期札幌市都市農業ビジョン策定にあたり、既存の農業者の意向を確認し反映させ、多様な担い手の確保や育成に力を入れることを求めます。また、農業者への支援には幅広い専門的知識が必要であることから農業職の採用の検討も求めます。

 次に、建設局です。
 本市は緑化推進のために、1000㎡以上の面積で建設等を行う場合、事業者に緑化を義務付け、都心部においては3割増しの値を採択基準としています。2001年に創設したみどり保全創出地域制度について、運用状況なども踏まえ、見直す必要の有無など「今後検討する」とのことでした。ウォーカブルなまちの推進や温暖化対策は急がれることから、樹木を豊かに育て樹冠に覆われる街にするために検討し推進していただくよう求めます。
 生活道路の除排雪についてです。
 パートナーシップ排雪制度は、「30年以上経過し、生活道路における市民ニーズの変化もあるため、市がすべての生活道路の排雪をすることも含め、予算や機材、人材の中でどのような作業が可能か検討している」との答弁でした。生活道路除排雪は、地域負担をなくし、市の責任で行うよう検討を求めます。

 次に都市局です。
 高断熱高気密住宅普及促進についてです。
 2016年に本市が市営住宅・里塚団地で実施した集合住宅の外断熱実証実験を機に既存マンションに対するアドバイザー派遣制度を実施し、断熱改修普及のために補助制度も検討されているとのことですが、市営住宅の壁面などの外部改修においても外断熱工法を使った高断熱化を図るよう求めます。
 木造住宅の耐震化促進についてです。
 能登半島地震では建物倒壊で多くの方が亡くなっています。住宅の耐震化の必要性が指摘されているところです。
 全国的には、低コスト工法や補助金の代理受領制度、非課税世帯への補助引き上げなどで負担軽減に取り組む自治体も増えていることから、本市の補助制度の拡大も検討し耐震化を促進するよう求めます。

 次に病院局です。
 市立札幌病院は、コロナ患者受け入れを担ってきた影響から黒字であった2019年度と同程度の医業収入がありながら、昨年度決算は13億円ほどの赤字となりました。診療報酬は、物価高騰分に見合う改定はされておらず、苦しい経営が続く見通しです。
 新たな中期経営計画の策定中でありますが、地域医療での役割を果たすため、本市としてしっかりと経営を支えることを求めます。

 最後に教育委員会です。
 子どもの権利についてです。
 子どもの意見表明の取組をお聞きし、「市の施策に対し、子どもが意見を伝える機会を活用し、主体的に社会の形成に参画する意欲を育むよう取組んでいく」また、「相談しても理解してもらえないと思う子どもが一定いる事への課題認識」が答弁されました。子どもの権利が大切にされるよう子どもが相談しやすい体制の充実を求めます。
 大規模小中学校の適正化についてです。
 東区の札苗北・札苗緑小学校、札苗北中学校は、市内で指折りの大規模校です。教育への支障がないよう、行事やカリキュラムの工夫などを行っているとのことですが、教職員の頑張りに頼らざるを得ない状況が常態化していることは、尋常ではありません。また、トイレ数についてはフロアごとの整備数は万全とは言えない状況であり、着席時間の工夫などで対応しているとのことでした。「札幌市立小中学校の学校規模適正化の基本方針」は大規模校も含めた適正規模の取組であるとの答弁でありました。大規模校の教育・施設環境の改善を早急に求めます。

 以上で、私の討論を終わります。