党札幌市議団が「学校統廃合問題を考えるつどい」開く

 日本共産党札幌市議団は6月30日、「学校統廃合問題を考えるつどい」を行い、会場はつめかけた参加者で満席となり、札幌市の一方的なやり方に対する怒りとたたかいへの熱気にあふれました。
 日本共産党札幌市議団の浅水明事務局長が開会あいさつを行い、その後、北海道大学の姉崎洋一名誉教授、全北海道教職員組合の新保裕副委員長、札幌市議団幹事長の小形香織議員の3名が報告を行いました。

小規模校では「社会性が育たない」は根拠なし――「コスト削減」がねらい

 専門家の立場から報告を行った姉崎氏は、冒頭「学校統廃合は、安倍教育改革の流れのなかででてきた問題であり」、人口減少のもとでの「市町村合併など地方自治の問題にもかかわる」とのべ、新自由主義的な学校体系の再編がすすめられており、「人格の完成」を目的としてきた教育が”国際競争に勝つ人材の育成”に変えられ、教育基本法「改正」(2006年)による愛国心や道徳教育の押し付けなど、義務教育の根幹を変える動きが強められてきたと強調しました。
 こうしたなかで2007年6月、財政制度等審議会が小規模校は「教育施策・効果上の問題があり財政上も非効率」「今後は、統合・再編の推進に向け…地域に応じた制度設計やインセンティブの付与等についての検討を進め…教育に係るコストを削減していく」との「建議」をだし、この財政当局の考えが、文科省の「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」にも反映されているとのべました。
 姉崎氏は、文科省などが小規模校では「社会性が育たない」「人間関係が固定化する」「クラブ活動が十分に行えない」などというが、「その根拠となるデータは一切しめされていない」と批判。一方、諸外国からは様々なデータがだされており、その分析からも「学校規模と学力との因果関係はない」と指摘し、逆に、生徒の参加率や出席率の高さ、中退率の低さは小規模校の特徴であるというデータも示されており、フランスでは小学校の平均規模は99人とのべました。

世界の流れは小規模校――大規模で少人数学級も実施していないのは日本くらい

 つづいて、道教組の新保氏が学校現場の視点から報告を行いました。
 新保氏は、道内の市町村では過疎化の進行で小中学校の統廃合がすすめられ、毎年約40校、この10年間で400校がなくなったと指摘し、地方からの人口流入が続いている札幌でも1985年をピークに児童生徒数の減少傾向が続いているとのべました。
 新保氏は、「適正な学校規模は、小学校で18~24学級で少なくとも12学級以上、中学校で12~18学級で少なくとも6学級以上」という市の基準によれば、小学校で12学級未満、中学校で6学級未満の統廃合対象校はそれぞれ40校と4校(2017年度)あるとして、「これらの学校を不適正というのか、学校の良しあしは規模では決まらない」と強調。そして、21府県が少人数学級を小中学校の全学年で実施しているのに、北海道と札幌市は、小学1・2年と中学1年生のみにとどまっていると指摘し、これを全学年に広げれば学級数も増えていくとのべました。
 また、世界では小学校の学校規模は100人から200人程度で、フィンランドは100人以下がほとんどと紹介。札幌市は、小学校で平均437人、中学校で平均443人(2013年度)となっているが、「大規模校で少人数学級も実施していないのは世界でも日本くらい」と批判しました。
 クラス替えができない小規模校では、「人間関係が固定化する」「切磋琢磨できない」などの議論について、「20人程度の学級でも集団として十分成り立ち、なにより1人ひとりに丁寧な授業ができ、学校行事でも1人ひとりが活躍する場面が多くなる」とのべ、「世界の常識は小規模校になりつつある」と強調。ドイツでは1学級18~30人程度、イギリスでは1学級30人が上限など少人数学級も世界の流れになっているとのべました。

「対象校を拡大し、取組を加速させる」――画一的で一方的な統廃合の押し付けは許されない

 最後に、小形議員がこの間の議会論戦と市の「学校規模適正化基本方針」について報告しました。
 小形議員は、この間の議会論戦で、「学校とまちづくりとの関係」についてくり返しただしてきたとして、2015年6月の代表質問では、新さっぽろ駅周辺の大規模な再開発が計画されているなかでの統廃合について、「小学校統廃合を単独の問題ではなく(まちづくりと)一体的に検討する必要がある」とただしたのに対し、教育長は「まちづくりと一体で検討することは非常に重要」というだけだったとのべ、また、今年5月の代表質問で、改めて「学校が地域ではたしている役割」について認識をただすと、「学校は災害対応など地域で様々な役割を担っている」としつつ、「まずは子どもたちが主体的に学ぶことを通し…」と話しをそらすなど、「まちづくりにとって学校がどのような役割をはたしているのか、何度聞いてもまともな答弁はなかった」と強調しました。
 もう一つは、「地域住民との合意がはかられているのか」についてただしてきたとのべ、豊滝小学校の問題を取り上げました。陳情がだされた豊滝小学校の統廃合問題では、教育委員会は「地域住民との合意なしにすすめない」「統廃合を前提とした話し合いはしない」と約束し話し合いをすすめていたのに、突然、統廃合が新聞報道され、地元住民に困惑と怒りが広がりました。このとき、「いつの話し合いをもって、大半の住民が統合はやむを得ないと言っていると判断したのか」との平岡議員の質問に対し、部長は「丁寧な話し合いのなかで統合はやむを得ないという声が多数だされた」としか答えられず、小形議員は、「結局、いつ合意したかはいえなかった」と批判しました。
 市の新しい「学校規模適正化基本方針」について、小形議員は、統廃合の「取組対象校を拡大する」「小規模校の増加に対応するため、学校規模適正化の取組を加速させる」と明記するなど、これまで以上に一方的な統廃合を推進しようとするもので、上からの画一的で強引なやり方は許されないと訴えました。
 参加者からは、はじめに統廃合が行われようとしている厚別区の代表と、2016年4月に統廃合された南区豊滝小学校の経験について発言がありました。

市のいう「適正規模」に教育的根拠なし――青葉小は「学校評価」でも高評価

 厚別区の高谷喜平さんは、「地元で青葉小学校と上野幌小学校の統廃合が大きな問題になっている」と訴え、2月末の住民説明会に85名が参加し、「市教委の説明は納得がいかない」「統廃合は延期か白紙にしてほしい」「もう決まったことなのか、ここで賛成か反対かを決めてもらいたい」などの意見が続出し紛糾したとのべました。
 怒りの理由について、「学校がなくなると児童会館も廃止する」「登下校が心配」「避難所となっている学校やグラウンドがなくなる」「若者がいなくなり地域の高齢化がすすむ」などの不安があることがあげられました。実際、青葉児童会館は、小学生から大人まで幅広い市民が利用し、「子育てサロン」「児童クラブ」、障がいをもつ子どもも受け入れ、夜間の利用もあり、1日平均60~70人、昨年度の利用者数は17,802人だったとのべ、「生活になくてはならない場所、コミュニティーになっているのに、市教委、行政はこうした実態をまったくつかんでいない」と訴えました。
 そして、「せめて児童会館だけは存続してほしい」という住民の切実な声に押された市が、「当面は存続する」とのべたことを紹介しました。
 高谷さんは、「学校の『適正規模』には教育的根拠はありません」とのべ、青葉小学校は9クラスで1クラス25人程度ですが、「子どもたちが落ち着いて勉強できる理想的な人数」と強調。「学校評価」でもどの項目も高評価で、少人数で”クラス替えがない”ことが運動会などの学校行事に支障をきたしているとか、子どもたちの成長を妨げているという「マイナス評価はひとつもありません」とのべました。

子どもたちが閉校を知ったのは新聞報道――小規模校では「切磋琢磨できない」「社会性が育たない」はウソ

 南区簾舞小学校との統廃合で閉校になった豊滝小学校の元PTA会長、伊達寛記(だて ひろき)さんは、子どもたちが閉校を知った経過や閉校が決まってからの学校の様子などについて話しました。
 伊達さんは冒頭、「豊滝小学校来年統合」を書かれた当時の新聞記事を示し、「教育委員会会議でこの決定がなされましたが、統合されることをこの新聞で子どもたちは知りました」とのべると、会場がどよめきました。この決定については、保護者にも地域にも説明がなく「僕らにとっては本当に寝耳に水」「一番かわいそうだったのは子どもたち、大好きな豊滝小学校でした」とのべました。
 当時をふり返った伊達さんは、市教委が「規模適正化の検討は閉校ありきではない」「地域の反対を押し切って閉校することはない」と約束していたこと、また、仮に簾舞小に統合される場合を考え、不安などをアンケートにまとめる作業中で、まさにその取りまとめを提出しようと思った日にこの新聞報道があったとのべ、「話し合いが続くはずだったのに”大方の理解を得ている”という話しにすり替わっていた」と怒りを込めました。
 閉校が決まって夏休みが明けた9月、学校に行くとロッカーなどの備品には「○○小行き」の張り紙がされており、伊達さんは「そんななかで子どもたちは授業を受けていました」とのべました。そして、閉校に向かう3学期に入ると、卒業制作のレリーフや写真などがどんどん外され、「廃棄」と書かれたテレビや棚が積まれるなか、子どもたちは学校に通い修了式を迎えました。
 簾舞小に通うようになってから「子どもたちの学習意欲が著しく下がりました」と指摘した伊達さんは、「子どもたちを支えているのはコミュニケーション」と強調。「担任の先生とコミュニケーションをとりながら1年生から家庭学習バリバリやるんです。先生がきちんと反応してくれるから、それが学習意欲につながる」「1クラス30~40人の簾舞小と5、6人の豊滝小では全然違うんですね」とのべました。
 そして、「『切磋琢磨』論とか『社会性が育たない』などというのは全部ウソです」とのべ、大学3年生になる長男は豊滝小の卒業で、学生の代表リーダーとして学生や教授のまとめ役をこなしているとして、「社会性に問題はないです」と強調すると会場から笑いがあふれました。

18年前に4校が統廃合、全区的な運動が必要

 つづいて、中央区からの参加者が18年前に4つの小学校が統廃合された問題について発言しました。これは札幌市で最初に行われた統廃合で、「反対する会」を結成し、1万8千筆の署名を集め、新聞やテレビにも取り上げられるなど1年半にわたり運動をすすめてきましたとのべました。しかし、結果にはつながらず「並大抵の力では及ばないと痛感した」「今度は10区に広がることであり、全区で統廃合を考える会を作り運動していかなければそう簡単な話ではない」とのべました。
 同じく中央区の参加者は、市の「適正化に関する基本方針」について、小規模校のメリットとデメリットの記述が、メリットは「家庭的な雰囲気のなかで教員が子どもたち1人ひとりにきめ細かくかかわりやすい」の1つだけで、デメリットは11も書かれており、「教育効果が上がりにくい」「学習活動や特別活動において活気が生まれにくい」など、驚くべきことが書かれていると指摘。市のいう適正規模、18から24クラスの学校とそれを下回る学校で、実際の学校評価、教育効果に差異はあるのかデータを出させて議会で追及していく必要があるとのべました。

小規模特認校で運動会は6種目に参加

 東区の2人の小学生を持つお母さんは、1学年1クラスの「小規模特認校」に通っているが、運動会や学習発表会などの学校行事で小規模では種目や演目が限られ”切磋琢磨する機会が減る”というが、運動会では6種目も出ましたとのべ、逆に、近隣のマンモス校では3種目しか出られず、学芸会では「自分の子どもがどこにいるかわからない」とお母さんが話していたと紹介。「私の子どもたちは、1時間くらいの劇なのですがはぼ出ずっぱり状態、楽しそうにやっている」と発言しました。
 西区の元教員という方は、今日のつどいで「札幌市の統廃合の全体像が見えてきたが非常に深刻」とのべ、来年の統一地方選挙で大きな争点になるものであり、全市的な住民運動に広げていく必要があると発言。学校は文化的にも地域の中心になっており、災害時の避難所でもある、適正化の基準だけですすめるのではなく、住民との話し合いのもとですすめるべきとのべました。

算数にーごープロジェクトで少人数が良いことは明らか

 南区の若いお母さんは、25人で算数の授業を行う「にーごープロジェクト」を見て、「娘のクラスは37人ですが25人だと生徒も集中し、先生も生徒に寄り添うように思えた」とのべ、札幌市も少人数の方が効果があるとわかっており、40人に詰め込むのではなく学校の存続と子どもたちのことを考えれば少人数学級が良いことは明らかと発言しました。
 同じく南区の参加者は、「学校統廃合など地域住民はまったく知らない」とのべ、町内会長は検討委員会のメンバーだが町内会の議題になることもなく2~3年で辞任、学校長も数年で退任して統廃合問題が浮上しても何の責任も負わないとして、「検討委員会のメンバーが地域住民にとって良き代行者と胸を張っていえるのか」とのべました。
 厚別区からの参加者は、上野幌小学校の説明会に参加したとのべ、青葉小との統廃合の検討が6年と長引いていることに、「両校の歴史は古く100年、50年を超え、どちらも地域に馴染んだ学校で、残したいとの思いが強く長引くのは当然」とのべました。